「姉妹の家」&「ラスト・チャイルド」

「姉妹の家」はドイツ人作家シャルロッテ・リンクによる愛と憎しみの心理サスペンス。
「ラスト・チャイルド」はアメリカ人作家ジョン・ハートによる家族の再生を必死で願う少年のミステリー。

別にこの二つの物語をとことん比較しようと言うつもりではないが、翻訳本、ミステリー、家族、この三つのキーワードが似ていることと,私が続けざまにこの2冊を読んだことから、つい並べてしまった。「姉妹の家」&「ラスト・チャイルド」_e0169056_011672.jpg

姉妹の家は1996年の今と1907〜1943年の昔の出来事が交錯する。
1996年、ドイツ人弁護士のバルバラは夫とともにイギリスのヨークシャーでクリスマス休暇を過ごすために一軒家を借りる。家主は70歳の老女ローラ・セリー。彼女は人に家を貸して家賃をもらうので、その間は妹のマージョリーの家に行く。
しかしその夜からヨークシャー地方は大雪となりバルバラと夫は、雪の中に閉じ込められて一歩も出られなくなってしまう。
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食料も無く飢えと寒さで震えながらバルバラは家の屋根裏から一冊の手記を見つけ出し読み始める。その手記は1907年90年程さかのぼった昔のこの家の住人フランシス・グレイか書いたものであった。フランシスの育ったグレイ家と隣のリー家の諍い、グレイ家のフランシスとリー家のジョンの恋愛。突然消えたフランシスの妹ヴィクトリア。
そして手記に書かれていた衝撃の事実とは?
現代のバルバラに迫り来る飢えと寒さに震えながらもバルバラは止められずに読み進む手記。とにかく昔と今の二つの物語が息きもつかせぬ迫力で迫ってくる。
題名からは何だか少女小説のような優し気な雰囲気を抱いてしまうが、とてもとても息苦しくも切ない物語であった。

ドイツ国内で1500万部のベストセラーだそうだが、この緊迫感がたまらない。複雑に絡み合う人々の幸せは何だろう。満足感にたっぷり浸ることが出来る長編小説だった。ミステリーの部分は明かす訳に行かないので是非ご一読お薦めです。



次の「ラスト・チャイルド」は想像を遥かに下回る私としては残念で、悔しい物語であった。

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というのは、突然行方不明となった妹を捜し続ける少年の妹への愛、ひたすらに家族の再生を願う13歳の少年の気持ちは凄く良く分かって、同情して、辛くて、可哀想で、感動するのだが,
母親の意気地無さがどうしても許せない。
映画「チェンジリング」のあの母親の毅然とした態度とは真逆に、惚けたように何も出来なくなってしまう母親。土地の有力者の言いなりに成ってしまう不抜けた母親。
しっかりしてくれよ、と読みながら叫びたくなってしまう。
その上、いつもお決まりのアメリカの、読み飽きた聞き飽きた暴力と酒とドラッグ。
それ程日常茶飯事ってことなのだろうか?

少年ジョニーと友人ジャックの二人には、同情し感情移入も出来たのだが,ジョニーの美しすぎる美少女の妹が突然失踪した直後の家族の苦悩はおおざっぱにしか語られていない。もっと綿密な表現、描写が欲しかった。失踪当時のことを思うと他人の私でさへも辛い。
どれほどの苦しみだろうか?気が狂いそうになるだろう。
しかし、狂っている場合ではないだろう、と母親をどなりつけてやりたい。
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Commented by saco at 2010-05-25 20:54 x
「ラスト・チャイルド」積読状態が続いています。
今日は、道尾くんの「光媒の花」が届きました。
映画の公開に先駆けて「告白」を再読していたので、
「ボーン・コレクター」が三分の二で止まってます(^^;
楽しみがいっぱいっす。。
Commented by harupy-15 at 2010-05-25 23:05
今夜はちょっと踊ってきました。
sacoさん、そういう時って満ち足りますよね。あれもこれも読まなきゃって時。
ラストチャイルドは書いた通り私にはあまり、、、でした。いつか読んだら感想聞かせて下さい。
今回の道尾君は興味あります。いつか貸してね。
私は、今日「モンスター」買いました。面白そう。
漫画じゃないよ。
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by harupy-15 | 2010-05-23 01:51 | 読書 | Comments(2)

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